PYNTORI’s diary

マトハズシのイグノーベル

RainMaker


Gathering Snowstorm


雨男裁判

 

ここは20XX年
科学の進歩により迷信といわれる類のものが
ほとんど解明されてしまった日本

 

金縛りや神隠しは実際にある、
UFOは地球に来ているし
宇宙人は既に地球に住んでいる
幽霊はいる、妖怪はいない、
ツチノコはいない
河童は藻で覆われた落武者だった
魔女はいない、ドラゴンもいない、
タイムトラベラーはいたなどなど、、
オカルトという言葉自体が
死語になりつつある時代

 

雨男についても遺伝や体質により
天候に影響を及ぼすことが解明され
国際的な「レインメーカー」の指標を基に
日本人も選別が進められていた

 

レインメーカー」とは雨を降らせる
一種の超能力者のことで最高レベルになると
国の管理下に置かれ行動に制限が設けられる

 

また干ばつ期には協力を強いられる場合もあるが
レベル2までは一定の規則を守ることで
普通の生活を送ることができる

 


レインメーカーの国際指標 

 

レベル1(立入禁止区域・行動制限なし)
1時間に1mm以下の小雨を降らせる、雨雲に対しての影響はほとんどない
外出制限はなし。但し能力の高まりを少しでも感じた場合は速やかに関連機関に申告することを義務付ける

 

レベル2(立入禁止区域あり・制限あり)
1時間に30mm程度の強い雨を降らせ、雨雲を刺激する危険がある
原則、土日祝日に人が集まる場所(屋外)へは立入禁止。但し雨が確実に降らないと判断できる場合とやむを得ない事情がある場合はリアルタイムに居場所を申告することで立入禁止は免除される
野球観戦で説明すると雲行が怪しい休日に東京ドームには行けるが横浜スタジアムには応援に行けない

 

レベル3(立入禁止区域あり・制限あり)
1時間に80mm程度の猛烈な雨を降らせ、雨雲を発達させる危険がある
レベル2の制限に屋内を加え、干ばつ期の降雨のボランティア(協力)を義務付ける、拒否はほぼ出来ない

 

レベル4(立入禁止区域あり・制限あり)
1時間に150mm程度の大雨警報級の雨を降らせ、雨雲を停滞させ通常よりも降雨時間を延ばす危険がある
レベル3の制限と協力に加え、山間部と水害の起こりやすい地域への立入禁止

 

レベル5(立入禁止区域あり・制限あり)
1時間に200mm以上の暴風雨を起こし、竜巻や大雨災害を引き起こす危険がある
レベル4の制限と協力に加え、台風などの進路に影響を与えたり、被害を深刻化させる危険があるため台風上陸前より特別隔離施設で待機、また耳の裏にGPSが埋め込まれ24時間監視対象となる

 

最高レベル(立入禁止区域あり・制限あり)
意識の有無に関係なく晴れた日に雨雲を発生させ、また雨雲を呼び寄せる超能力者
レベル5の制限に加え、日本国内から強制退去、孤島にて隔離

特例として同レベルのメインメーカーとサニーメーカー(晴男・晴女=サニーメーカー)が行動を共にする場合は能力が相殺されるため全レベルで制限を解除することができる

 


そして、日本で初の雨男「R」の裁判が始まった

 

罪状は立入禁止区域への侵入で
水害を招いたにも拘らず立ち去ったとする
「降り逃げ」の罪だった

 

重罪とされ懲役にすると約20年が妥当と言われ、殺人よりも重い刑となる

 

Rは28歳独身の会社員
レインメーカーレベル2としての
自覚は当然していたが、
平日は会社と家の往復
休日は自宅で過ごし
不要な外出はしないように
心掛けていた
というよりも元々そういう
ライフスタイルだった

 

またレベル2までは周りにも
チラホラ居たこともあり
過度には気にもしていなかった
むしろ話のネタにすることで
ステータスを感じていた

 

事件発生当日は日本全域で雨が降っていた

 

低レベルのレインメーカーとしては
罪悪感を感じない日だった
また、最近買った自転車を走らせるチャンス
Rは少し迷ったが、昼過ぎに雨の中20キロ離れた隣街の
大型ショッピングモールに出掛けることにした
北海道物産展が開催中でどうしても行きたかった

 

道中、山の麓付近でゲリラ豪雨に遭い
視界が悪くなったため
20分程軒先きで雨宿りはしたものの
無事買い物を済ますことができ
行きとは別のルートで19時頃帰宅
買ってきた物産展の酒やつまみを
食べながら借りてきていた
DVDを見て寝落ちした

 

翌日のニュースで
自分が雨宿りした山の麓で土砂崩れが発生し
橋が崩壊、さらに降り続けた大雨で河川が氾濫
人的にも家屋にも地域にも甚大な被害を
もたらしたことを知り青ざめた

 

原因究明が急がれる中
現場付近の防犯カメラに映ったRを発見
事故発生から1週間後の早朝、自宅前で逮捕された

 

連日A級ネタとしてトップニュースで扱われ
久々の休日の外出でウキウキしていた顔が
したたかな愉快犯的な表情だったと
置き換えられメディアやネットを中心に誹謗中傷をされ散々叩かれた

 

また過去に遡りあることないこと噂され

実家や兄弟まで被害を受けていた

 

公判でRは涙ながらに無実を訴えた
レインメーカーは個人の能力としては
あまりに無意識で確率も100%ではない
被害を知ったのも翌日で降り逃げの
意識もなく故意ではない」

 

また6段階評価でレベル2と判断されたことで
上のレベルよりまだ自由だしマシだと楽観視し
逆に気にしなくなりつつあったことと
どうせ雨が降ってるなら出かけていもいだろうという
気の緩みを深く反省した

 

弁護人は
Rのレベルを自発的に2つ上げること
晴女を彼女とすること
晴男の友達をつくること
干ばつの際には必ず協力をすること
この4つをRに生涯課すことを約束し
情状酌量と無罪を訴えた

 

判決は裁判長の叱責と
Rの主張を全否定することから始まり
裁判員からも同様の罵倒を受けたが
充分反省していること
社会的制裁を既に受けたこと
被害を受けた地域の自治体や被害者と
示談が成立(RM保険により救済)
していることを理由にギリギリ無罪となった

※RM保険とはレインメーカー専用のスイスの保険会社

 

まるで雨男に対し見せしめかのような形に

終始したこの裁判は世界中で話題となり
人権団体による抗議活動も各地で行われ

低レベルレインメーカー

東京裁判所へ集結、東京は100日間雨が降り続けビショビショになり暴動が起きるなどの社会現象も発生した

 

またレインメーカーの認知度も一気に高まり
雨の少ない地域からのオファーが殺到し

ビジネス化したが
隣接する地域で干ばつ被害が出たため
前述の東京100日の雨暴動のこともありレインメーカー同じ場所に集団で集まることが禁じられるなどの
追加処置がとられまた世界中を騒がせた

 

その後Rは普段の生活を取り戻し
サニーメーカーの妻と2児の父となり
平穏な毎日を過ごしている

 

統計的に晴女と雨男の子供は中立タイプとなるが、

国からの監視対象からは生涯外れない

 

おわり

 

 

感想


私自身はどちらでもない中立タイプで
どちらかに影響を受けやすい側だと思いますが
実際にアメリカでは裁判になっていたり
ウェザーニュースの記事にも
雨男・雨女はなっていたりするので
いつか日本でもこのような裁判が
本当に行われるかもしれません、
特別私は天気は気にしませんが

地元の友達の結婚式が何故かいつも雨なのは気になります